市民オンブズマン活動について

           弁護士 阪本康文

市民オンブズマンをご存じでしょうか。

英語のオブザーブに「監視する」という意味があります。そこからオンブズマンは監視する人ということになります。「市民」がついているのは、監視する主体は市民ということであり、監視の対象は行政です。なお、行政を監視するのに性別は関係ありませんので、「オンブズパーソン」という名称をつけているところもあります。「市民オンブズマンわかやま」は1997年4月5日に結成されました。私は結成以来、共同代表の1人を務めています。

活動内容を簡単に言えば、税金の使い方を監視することです。税金の無駄遣いや不正な使い方をすれば、住民に迷惑をかけることになりますし、場合によっては犯罪行為になります。多くの人は「公務員は悪いことなどするはずがない。」などと考えていたと思います。ところが、それが幻想であったことを明らかにしたのがオンブズマン活動でした。

個々の公務員の方をみれば、良識を持ち、真面目で優秀な方が多いと思います。ただ、税金の使い方について、組織の論理で見ると別の原理が働いていたようです。ずいぶん前にビートたけしの「赤信号みんなで渡れば怖くない」というギャグがはやりました。それに象徴されていると思われますが、日本人の集団性、組織に従順なところが、悪い方向にも作用し、「悪習」が引きつがれてきました。

たとえば、「食糧費」です。「食糧費」といってもピンと来ないと思いますが、この「食糧費」を使って地方公務員が国の公務員を接待するという、官官接待が日本全国で行われていました。和歌山県もその例外ではありませんでした。公務員同士の飲み食いに税金を使い、しかも、その金額も常識を遙かに超える多額でした。旅費もカラ出張、水増し出張など大きな不正の温床となりました。

これらは、食糧費の情報公開請求に始まり、住民監査請求、そして、住民訴訟を提起するなどして和歌山県の公金支出を追及し、約15億円もの返還に結びつくという大きな成果を上げました。「公務員の常識は非常識」といわれるほど、社会やマスコミから厳しく批判され、オンブズマン活動は世間の共感を得て、定着してゆきました。その後は、さすがに犯罪行為に該当するような税金の使い方は、姿を消したようです(複雑化、巧妙化したところがあるかもしれませんが)。

取り組んだ問題は多数ありますが、大きな成果をあげたものとして議員の政務調査費があります。これは第2の歳費といわれるほど使途が不透明であり、和歌山県議会議員の政務調査費の返還を求める訴訟を3回提起し、いずれも大阪高裁で勝訴が確定しました。

私どもの事務所はこのように公益的な活動にも取り組んでいます。これからも、市民の皆様とともに、市民目線に立って活動を続けて行きたいと思います。

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